夜空には、無数の星が輝いていた。


少し遠くに聞こえる祭りの音や、人の声。


それがあたしにとって唯一夏らしくて、暗がりな宙を仰ぐ。



「あたしもあるよ、夏祭り。
ちっちゃい頃、家族4人で浴衣着て。」


シュウと手を繋いで駆け回って、両親に怒られたんだっけ。


それももう、遠い昔のことで、大して思い出せもしない記憶を辿った。



「シュウに、会いに行くか?」


夏の夜の墓地に行くだなんて、それじゃただの肝試しだ。


何よりこんな状態で会いに行けるはずもなくて、あたしはただ、首を横に振る。



「なぁ、レナ。」


「ん?」


「俺、もうすぐ25になんの。」


「そうなの?」


「その日、うち来いよ。」


一緒に過ごす、ということだろう。


少し驚いていると、何か作って、と彼は言う。



「野菜まみれは嫌なんじゃなかったっけ?」


「良いよ、それでも。」


おおよそ、ジルらしくない言葉だった。


あたしはもしかしたら、ギンちゃんが言うように騙されているのだろうか。


何にもわからないまま、またひとつ、約束だけが増えた。


手首のブレスは熱を失ったように今日も冷たく、ジルの悲しげな瞳のようだと思う。