それから結局、葵は一度として店に顔を出すことはなく、アイズを辞めたようだ。
もちろんそれは、店長からの事後報告だったのだけれど。
「彩って怖いと思わない?」
そう、あたしに耳打ちしてきたのは、半年ほど前に入店した美妃サンだった。
彼女はあたしのひとつ上で、頼れる姉のような存在だ。
「葵ちゃんのお客、随分彼女に流れてる。」
「…そう、ですね。」
「あたしやレナちゃんのお客も、そのうち引っ張られるかもね。」
冗談にしても、笑えない。
実際、葵が辞めてから、彼女を指名していたはずのお客は、彩指名に変えていた。
もちろん辞めた後だから指名替えではないが、それにしても見ていて気分の良いものではない。
「だって、あれって絶対一発ヤッてると思わない?」
彩の接客は、基本、客に甘える風だ。
それがまるでおねだりしているようにも見え、同性から大して好かれているわけでもない彼女がそんな風に言われることは、半ば日常のようなものだった。
だけどもジルの一件もあり、庇うことも出来ないまま。
「あーあ、そろそろ本気で新しい店探さなきゃ。」
「…美妃サン、アイズ辞めるんですか?」
「みんな言ってるわよ。
店長も変わるんじゃないかって話だし、どうなるかわかんない店なんて、居るだけムダだと思わない?」
あたしや葵が入店した頃のアイズと言えば、小箱でもそれなりに集客があり、賑わっていたはずだった。
蘭サンを中心に大したトラブルもなく、みんながこの店を好きだったはずなのに。
なのにもう、あの頃からは見る影もない。
おまけに風評被害が一番タチが悪く、悪い噂というものは、自然と人の足を遠のかせ、結果、それが悪循環に繋がるのだ。
もちろんそれは、店長からの事後報告だったのだけれど。
「彩って怖いと思わない?」
そう、あたしに耳打ちしてきたのは、半年ほど前に入店した美妃サンだった。
彼女はあたしのひとつ上で、頼れる姉のような存在だ。
「葵ちゃんのお客、随分彼女に流れてる。」
「…そう、ですね。」
「あたしやレナちゃんのお客も、そのうち引っ張られるかもね。」
冗談にしても、笑えない。
実際、葵が辞めてから、彼女を指名していたはずのお客は、彩指名に変えていた。
もちろん辞めた後だから指名替えではないが、それにしても見ていて気分の良いものではない。
「だって、あれって絶対一発ヤッてると思わない?」
彩の接客は、基本、客に甘える風だ。
それがまるでおねだりしているようにも見え、同性から大して好かれているわけでもない彼女がそんな風に言われることは、半ば日常のようなものだった。
だけどもジルの一件もあり、庇うことも出来ないまま。
「あーあ、そろそろ本気で新しい店探さなきゃ。」
「…美妃サン、アイズ辞めるんですか?」
「みんな言ってるわよ。
店長も変わるんじゃないかって話だし、どうなるかわかんない店なんて、居るだけムダだと思わない?」
あたしや葵が入店した頃のアイズと言えば、小箱でもそれなりに集客があり、賑わっていたはずだった。
蘭サンを中心に大したトラブルもなく、みんながこの店を好きだったはずなのに。
なのにもう、あの頃からは見る影もない。
おまけに風評被害が一番タチが悪く、悪い噂というものは、自然と人の足を遠のかせ、結果、それが悪循環に繋がるのだ。


