「じゃあ、アイズも潰れんの?」


「どうかな。
お前らの売り上げ次第だけど、俺がクビになったらすぐに新しい店長が来るだろうよ。」


人なんて、使い捨てだ。


葵が蘭サンを蹴落としてナンバーワンになったように、代わりなんていくらでも居るのがこの世界。


それでも、あたしの居場所はもう、ここにしかなかった。



「レナ、お前は見失うな。」


大事なことを忘れるな、と彼は言う。


けれどもそれが何なのかは教えてくれず、店長は何もかもを諦めたような顔で小さく口元を緩めた。


ひとり、またひとりと、あたしの周りから居なくなっていく。



「レナは立派になったよ。
どうせすぐ辞めるだろうと思ったけど、育てた甲斐があった。」


「…そんなこと、言わないでよ…」


「お前が居れば、きっとアイズは大丈夫だ。」


自然と涙が溢れてしまう。


唇を噛み締めると、言葉が出ない。



「ムチャ言わないでよ、あたしがどうにか出来るわけないじゃん!
店長まで本当にクビになるみたいなこと言わないで!」


どんな人でもこの人は、確かにこの世界で生きるあたしの育ての親だ。


時に厳しく、時に的確な教えによって、あたしはここまでこれたのだから。



「…レナまで泣くなよ…」


困ったように言いながら、もう帰れ、と促された。


ちゃんと店長と話が出来たのは、それが最後だった。