「何だかレナさんって、ギンくんと付き合ってるみたいですね。」


ははっ、と笑った彩のいたずらな台詞。


この子は前に、あたしとジルが一緒に帰っていたのを見ているくせに、どういうつもりだろう。



「だから、あたしの彼氏は油田王だってば。」


仕方なく、そう言って話を終わらせた。


彩はそんなあたしをクスクスと笑い、何だか小馬鹿にされているような気さえしたが。



「でも、レナさんってあたしとは違ってモテますもんねぇ。
お客様の中にもレナさんのこと本気で好きな人多いみたいだし。」


言うに事欠いて、この子は何を言い出したのか。


仮にもジルだって、お客だと言うのに。


何より彼女の腹の底を垣間見た気がして、小さく唇を噛み締めた。


ジルはそんなあたしを一瞥するだけで、煙草を咥えてしまう。



「彩、何が言いたいの?」


「変な意味じゃないですよ。
羨ましいなぁ、って思って、あたし憧れてるんです。」


作った笑顔で言うと、彼女もまた、笑って返した。


本当に、いつもの悪気の欠片さえないような顔だけど、あたしの全てがこの子を拒否している。


あたしはもしかしたら、彩に敵だとでも思われているのだろうか。


でも、その理由がわからない。



「まぁ、俺からしたらどっちも可愛いで?」


そんなギンちゃんの言葉に制止され、あたしはそれ以上の言葉を飲み込んだ。


結局彼らは、携帯が鳴り、それからすぐに仕事に戻ることになったらしい。


「また来るから。」とだけ、ジルは言葉を残した。