「…今日、どうしたの?」


「別に。
暇になったから、ギンがお前に会いたいって。」


そう、と言うことしか出来なかった。


あたしの知らないところで、一体みんな、何を企んでいるというのだろう。



「レナちゃん、気分悪そうやん。
俺がベッドで介抱したろうか?」


冗談とも本気ともつかないような、笑い混じりのギンちゃんの言葉。


ジルは肩をすくめるのみで、制止さえもしてはくれない。


辛うじて首を横に振ると、いつの間にか慣れた手つきで彩は、目の前にグラスを置いた。



「それじゃギンちゃんの彼女サンに怒られるじゃん。」


「そら大変やわ。
俺、世界中の女の子みーんな彼女やのに。」


笑って言えば、そう、おどけたように返された。


この人もまた、店長と同じように焦りさえ顔に出すことはなく、殊勝だなと思う。



「それってあたしもギンちゃんの彼女ってこと?」


「モチロンやんか!」


この人は、ジルとあたしの関係を知っているくせに、こうも堂々と言うのだろうか。



「残念だね。
あたしは油田王と付き合ってるの。」


「うわっ、そりゃ勝てへんわ。」


上辺では、多分これで、場が和んだのだろうとは思う。


けど、彩はいつも通りの甘ったれた顔で笑ってるし、ジルに至っては、重苦しい空気を放ったまま。


何より前にも増して、疲れが顔に滲んでいる。


本当に、本気で嶋さんとのあの約束をひとりで実行するつもりらしい。