予感というものは、当たるようになっているらしい。


ましてや、それが悪い予感ならことさらだと、どこかで聞いたことがある。



「レナちゃん!」


ハグされそうなほどの勢いに、思わずあたしは顔を引き攣らせた。


ジルと、そしてギンちゃんが来店し、おまけにあの日のキレっぷりはどこへやらの金髪クンは、とてつもなくフレンドリーなのだから。


それが逆に、異常に怖い。



「いらっしゃい。」


接客的にそう言い、ぎこちなくもテーブルへと通した。


ジルは、嶋さんとのことを言うなよ、とでも言いたげな目でこちらを一瞥し、相変わらず大して喋ることもなく、状況の説明を求めるのは無理だろうと思った。


肩をすくめたその刹那、多分あたしは身動きひとつ取れなかったろう。



「レナさん、どうしたんですか?」


彩が、ギンちゃんの指名で来たから。


彼はいつも、特定の誰かに指名を入れることはなく、フリーだったのに。


ヘルプの子に場内を入れることはあっても、絶対に誰かを本指名にはしなかったのに。


なのに何故、そんなギンちゃんが顔を合わせたこともない彩を、しかもいきなり指名になどしたのか。



「レナちゃん、どうしたん?
あ、この前のこと怒ってるんやったらホンマごめんなぁ?
あの時の俺、殺気立っててん。」


シュンとしたギンちゃんの顔。


ジルはこちらを見ることもなく、彩は不思議そうに首を傾けている。


まるであたしだけ、この状況についていけてないような置いてきぼり感を喰らっている。