静かにジルは、過去を話し始めた。


その頃のジルは、ギンちゃんと一緒に暮らしていたのだと言う。


そして、ギンちゃんと花穂サンの3人で、つるんで遊んでいたのだとも。


だけども花穂サンが死に、ジルは自暴自棄になるように仕事も辞め、毎日毎晩、街を彷徨っていたのだとか。


次第に喧嘩は日常となり、正直死んでも構わないと思っていたらしい。


そしてその日も、絡んで来た男と睨み合いになった。


それがヤクザの構成員だなんてことも知らず、ジルは相手が意識を失うほどに殴り続けた。


ギンちゃんが止めに入っても構わず、彼は振り上げた拳を落とすことを止めなかったのだ。





連れ込まれたのは、ヤクザの事務所だったらしい。


大人数の男達に囲まれ、ふたりは散々殴られ、そしてその場に正座をさせられた。


止めに入っただけのギンちゃんも、ジルの仲間ということで、たったそれだけのことで、同じように殺される寸前まで追い込まれたのだ。


ジルはその時、死ぬほど後悔したのだと言う。



「俺はどうなっても構わないから、コイツだけは逃がしてくれ。」


と懇願したが、もちろんそんなものを聞き入れてくれるはずもない。


まさに絶体絶命のその時、嶋さんが現れたのだ。


彼はその組のカシラで、つまりは誰も逆らえない存在。



「堅気のガキを殺したって、一銭の得にもならねぇだろ。」


「その二匹、俺が飼ってやるよ。」


彼はそう言ったのだと言う。


言葉を拒否する術は、もちろんあるはずもない。


その日から、ジルとギンちゃんは、嶋さんの下でヤバい仕事に手を染めることとなったのだとか。