彼の声は幾分震えているようにも感じられたが、嶋さんはまたせっかちだなぁ、と漏らすだけ。


そして煙草を消し、最後の煙を吐き出して。



「わかんだろ?」


「…金、ですか?」


そうだ、と彼は言う。



「お前がこの世界抜けたがってんのくらい、わかってんだよ。」


恐ろしいほどに顔を歪ませ、嶋さんは吐き捨てた。


辞めたいけど辞められないのだと、前にジルは言っていた。



「…ギンは、どうなるんですか?」


そりゃあお前次第だよ、と言った嶋さんの瞳は、値踏みしているようにも見える。


回りくどい会話に、ジルも次第に苛立ちを隠せなくなっているのかもしれない。



「いくらっすか?」


「ギンをこの世界から抜けさせてぇなら、一千万。
テメェも抜けてぇなら、計二千万、ってとこだな。」


「…そん、な…」


常識で考えたって、無理な額だ。


ジルは悔しそうに唇を噛み締めるが、それさえ愉快だと言った感じで、嶋さんは口元を上げた。



「まぁ、ギンはテメェに巻き込まれたんだもんなぁ?
助けてやりてぇよなぁ?」


まるで、誘導尋問のような言葉だ。


何も言えなくなった彼を確認し、嶋さんは立ち上がって窓の前に立つ。


今日も雨音だけが響き、外の世界は窓ガラス越しに歪んで映る。