瞬間、ジルは言葉を詰まらせるように、一瞬目を見開いた。


それを見逃さなかったのだろう嶋さんは、またハッと笑う。



「コソコソしてたみてぇだけど、全部俺にゃ伝わってんだよ。
しかもそいつの姉ちゃんは今、“レナ”って名前でキャバで働いてんだってなぁ?」


「…何で、それを…」


「確か、そこのネーチャンも今、“レナ”って呼んでたなぁ?
これって何か関係あんのかぁ?」


向けられた、やっぱり何もかも知って聞いているのだろう瞳に、あたしはゾッとしてしまう。


ごくりと生唾を飲み込んだその瞬間、ジルは彼に掴みかかった。



「ジル、やめて!」


辛うじてジルを制止するように腕を掴むと、彼はクソッ、と吐き捨てた。


何もかもがバレているのだろう、あたし達はこれから、どうなるというのだろうか。



「賢明な判断だな、ネーチャン。
ジルが俺を殴ったら、さすがに庇えねぇからよ。」


のしかかるほどの威圧感の中で、あたしは震えないようにと唇を噛み締めた。


ジルは拳を握り締めるが、少しの後、諦めるようにため息を混じらせる。



「…俺にどうしろって言うんすか?」