刹那、ピンポーン、とチャイムが鳴った。


この部屋でそんなものを聞くのは、少なくともこの半年以上の中で、初めてのことだ。


誰だよ、と漏らしたジルは煙草を消し、玄関へと向かう。


ガチャリと音がして、あたしも視線を向けた瞬間、彼は驚くように足を引いた。



「よう、ジルコニア。」


低く、地を這うような声色だった。


ゾッとするほど威圧的で、悪魔が居るとしたらきっと、こんな感じじゃなかろうか。



「…嶋、さん…」


漏らすようにジルは、その名を呟いた。


が、呼ばれた彼はフッと笑いながらサングラスを取り、部屋の中へと足を進めてくる。


そしてあたしを一瞥し、また鼻で笑った。



「何だよ、女とシケ込んでる最中だったのか。」


ドカッとソファーに腰を降ろし、嶋さんと呼ばれた彼は煙草を咥える。


これがあの、ジルとギンちゃんが恐れる“嶋さん”なのか。


焼いているように肌は浅黒く、鍛えているのだろう引き締まった肉体が、スーツの上からでも見て取れる。


眼光鋭く、まさにヤクザのそれは、目が合うだけで人でも殺してしまいそう。



「レナ、帰れ。」