おかみさんも大将も、悲しみに暮れていた。


そして遺品を整理していたのだと力なく言って、あたしに数冊のノートと紙袋を手渡してくれた。



「シュウの日記よ。
お姉ちゃんに持って帰ってもらいたくて。」


差し出されたそれを受け取り、中を開くと、思わずあたしは唇を噛み締めた。


それには、シュウがここに来てからの2年が綴られていて、どれほど毎日を楽しく過ごしたのかが読み取れたから。


そして、病気への不安、あたし達家族のこと。


特にあたしのことが多く書かれ、また涙が込み上げてきた。




―姉ちゃんには、ちゃんと話すべきだったのかもしれない。


―謝りたいけど、許してくれるかな。


―姉ちゃんはすぐに無理をしたがるから、あの家族の中に居ることが心配。



そして最後に、



―姉ちゃんの誕生日に、遅ればせながらプレゼントを買った。

姉ちゃんに何かあげるのは初めてだけど、喜んでくれるかな?

それでも、姉ちゃんにはきっと似合うと思う。

すっごく綺麗になってたから、ちょっと渡すの照れくさいけど、今度会ったらどんな顔してくれるか楽しみだなぁ。




紙袋を開けると、ダイヤのピアスが入っていた。


決して安くはない代物だろうけど、あの子はあたしのために、コツコツ貯めていた貯金をはたき、どんな顔してこれを買ってくれたと言うのだろう。


あの子のために何も出来なかった不甲斐無い自分に悔しくなり、そしてその優しさに嬉しくもなり、それを握り締めながら肩を震わせた。



「ここ最近、あの子はあたし達の前でもお姉ちゃんの話ばかりだったわ。
小さい頃からの思い出話をたくさん聞かせてくれたの。」


あたしはそんな、出来た姉ではない。


シュウに自慢してもらえるほど、すごくもないのに。