「仕事、どうすんだ?」


それも考えなければならないのだと、今更思い出した。


だってシュウが死んでしまった今、あの仕事に固執する理由はもうないのだから。



「わかんない。
でも、すぐにすぐは辞めないよ。」


「そっか。」


「次のことなんて全然考えてないし、それに一応、あたしを指名して来てくれるお客も居るからね。」


だから不義理にはしたくないんだ、と付け加えた。



「ジルもさ、戻らなくて平気?」


「良いよ、そのことは。」


仕事の話なんて、やっぱり互いに似合わない会話だと思う。


そもそもあたし達の間には、そんなものなんてなかったはずなのに。


なのにいつの間に、こんな風になってしまったのだろう。



「つか、お前ホントに寝ろよ。」


「ジルだってほとんど寝てないじゃん。」


「俺は慣れてるから良いんだって。」


この二日、寝たのか寝てないのかですら思い出せない。


ただ、ジルの胸の中では少しだけ、眠ったような気もするけれど。


結局、車内でも眠ることはなく、車はあの小料理屋に向かった。


付き合わせてごめん、と言えば、彼は、良いよ、別に、なんて言う、いつも通りの会話ばかりが繰り返される。


海は少しだけ、荒れているような気がした。


曇った空を投影したような色で、きっと海またも、シュウを失った悲しみで泣いているのだと思った。