「水商売なんか辞めろ。」


シュウの第二の両親に骨の一部を持ち帰ってもらい、ジルと別室に居る時だった。


それまであたしと目さえ合わせなかったお父さんがやってきて、これからのことを話そう、と言ったのだ。


そして、何なのかと思えば、「世間体を考えろ。」と付け加えられた。


家を出る時だってあたしの存在なんてないようなものだったし、もちろんキャバやるって言っても何も言わなかったくせに、何を今更、と思うのだけれど。



「本当にそうよ。」


それでも何も言わないあたしに、すかさずお母さんが口を挟んだ。


それも、まるで汚いものでも見るかのような口調で。



「シュウはとても良い子だったわ。
愛里みたいに道を踏み外すこともなかったし、あのまま病気なんてしなければっ!」


そこまで言って言葉を飲み込み、彼女は代わりに憎々しげな瞳であたしを睨む。


正直、またなのか、としか思えなかった。



「シュウと愛里が入れ替わってくれたら…」


「おい、待てよ。」


言葉を遮ったのは、ジルの低い声だった。


思えば彼は、今まで一度としてあたしの両親の言葉に反論なんてしかなったはずだ。


だからこそ、余計に驚いた。



「アンタ、頭おかしいだろ、普通に。
それってつまり、コイツは必要ねぇってことだろ?」


「部外者は口を出さないでちょうだい。」


「部外者だろうと関係ねぇだろ!
普通は残された娘の心配するんじゃねぇのかよ?!
大事じゃねぇのかよ?!」


ジルが声を荒げた姿なんて、初めて見たのかもしれない。


その気迫に圧倒されたのか両親も、少しバツが悪そうに視線を逸らす。


思わず止めに入ろうとすれば、逆に「行くぞ!」と言ってあたしは、ジルに部屋から連れ出されてしまう。