病院の手術室の前で、涙に濡れた顔のおかみさんと、憔悴しきった顔の大将が立ち尽くしていた。


そんなものにゾッとして、小走りでそこに近付きあたしは、彼らの体を強く揺する。



「シュウは?!
シュウはどうなったんですか?!」


「落ち着いて、お姉ちゃん!」


お姉ちゃん、と呼ばれ、ハッとした。


こんな時こそしっかりしなきゃと思う反面、未だ手が震えたままなのだから。



「お店に出てた時、急に頭が痛いって言って苦しみ始めて。
そのまま救急車を呼んで、手術室に運ばれて以来なの。」


腕時計で確認してみれば、もう3時間以上は経過していることになる。



「…シュウ…」


呟けばまた、恐怖心に支配された。


ジルもまた唇を噛み締め、冷たい廊下には4人分の不安な帳が下りたまま。


それ以降、誰も口を開くことはなかった。


ただ、全員が手術室の扉を見つめたまま、祈りにも似た気持ちを抱いている。