「サキちゃんだってさ、結局はホストに狂ってんじゃん。
どうせ騙されるだけだよ、あたしみたいにね!」


自嘲気味な、葵の言葉。


サキちゃんは本気でシラケたとでも言った顔で、話にならない、と舌打ちを混じらせた。



「あたし、葵さんがそんな人だとは思いませんでした。」


「勝手なイメージ押し付けんなよ!」


そう、声を荒げた彼女はその辺にあった灰皿を投げ、驚いたあたし達に見向きもせず、逃げるようにきびすを返した。


ガラス製の安灰皿は、音を立てて床に粉砕する。


何もかもが、壊れたのだと知った。


サキちゃんもあたしも、それを片付けようという気も、ましてや気力もなく、スプリングの壊れかけたソファーへと身を沈めた。


店でムカつくことがあればクロスに足を運んでいたはずのあたし達も、今日ばかりはそんな気分にはなれないまま。


まぁ、誘われたとしても、拓真と寝たとか思われてるわけだし、今は行こうとは思えないけど。



「あたし別に、トオルとなんて寝てないし、恋愛感情もありませんから。」


確認するように、サキちゃんはあたしへとぼそりと呟いた。


一瞥すれば、彼女は口をへの字に曲げ、不貞腐れた子供のようだと思う。



「あたしだってそうだよ。」


けど、ジルのことは否定なんて出来ないのだから。


サキちゃんはもしかしたら、葵と同じくらいにあたしのことを汚いと思ってるのかもな、とため息を混じらせた。



「…レナさん、これからどうするんですか?」


これから、とは、アイズを辞めるかどうか、だろう。


わかんない、と首を振ると、不貞腐れたままの彼女は、口を開いた。



「正直あたし、何を信じて良いのかわかりません。」