「泣かないでよ、姉ちゃん。
これじゃ俺、すぐに死んじゃうみたいじゃん。」


そんな切なそうな笑みが向けられ、顔を伏せることしか出来なくなる。


男の子だから泣かないのだと、拓真は言っていたけれど。


シュウもまた、いつの間にか泣き虫なんかではなくなっていて、これじゃやっぱりあたしはダメな姉だ、と思わされた。



「ごめんね。
俺が病気じゃなきゃ良かったのに。
姉ちゃん、大学で歴史学学びたいって言ってたよね?」


ただ、首を横に振ることしか出来なかった。


神様ってヤツが居るんだとしたら、何でシュウを選んだんだろうと、憎々しくも思ってしまう。


そして何より、ごめん、とばかり言う弟の優しさが痛い。



「そんなのもう、良いんだよ。
別に、それ学んだからって何かになりたかったわけでもないし。」


涙で頬を濡らしながら、それでも小さく笑うと、シュウも少し安堵した表情になった。


顔つきも、昔より大人びて見える。



「あ、バス来たよ!」


涙を拭い、あたしは立ち上がった。