ラブホでテレビ観てても、彼の瞳はいつも、どこか遠くでも眺めているようだった。


セックスの時以外はまるであたしなんか見てないような顔してて、何を考えてるんだろう、と思ってしまう。



「ジルってさ、人生で何か楽しいとか思うことってあるの?」


「…は?」


「全然楽しそうじゃない顔してる。
てか、爆笑したりするの?」


そう言えば、彼は宙を仰ぐように小さくため息を漏らした。


何かこう、あたしが言える台詞でもないけど、投げやりってゆーか、死にたがってるような顔してるから。



「お前、俺が笑わない人だとか思ってる?」


「…思ってるかも。」


大体、笑ってたとしても心の底からってわけじゃなさそうだし。


ジルの体の上に馬乗りになるような格好になり見下ろすと、彼は軽く視線を外してしまう。



「人生なんて、つまんねぇんだよ。」


「…え?」


「いつ死んでも良いと思ってるし、俺はきっと、地獄行き決定だから。」


悲しいことを言う人だな、と思った。


長い前髪の隙間からこちらを捕らえた瞳はどこか寂しげで、あたしの胸の奥をザワつかせる。



「じゃあジルは、ある日突然居なくなったりするかもってこと?」


「そうかもしれねぇなぁ。」


「なら、あたしも一緒に地獄に行ってあげる。」


「…は?」


「ひとりで行かないでよ。」


ひとりで楽になんてらないで、と言ったとき、ジルの顔は諦めたように口元を緩めていた。


別に馬鹿なこと言ってるのはわかってるけど、それでもこれ以上、あたしだって退屈な日々にはうんざりなんだ。