煙草を咥えたままの彼の伏せた瞳の横顔を見つめながら、不意に、この関係が終わってしまうのかもしれないと思った。


セックス以外でジルと繋がっていられる術なんて知らなくて、改めて、脆い関係なのだと思い知らされている気がする。


どうなるのか、どうなりたいのかもわからない、不確かなだけの関係。


ジルはあたしを縛らないんじゃなくて縛れないだけだってことくらい、もうわかってる。


お互い、仕事としてやってることに嫌悪感を覚えながらも、辞めるわけにはいかないのだから。


最後に長く煙を吐き出しながら、彼は煙草を消した。



「抱いて。」


多分声は、震えていたのだと思う。


人が見れば、きっとあたしは滑稽なだけの女だろう、それでも結局は、こんな行為以外に知らないのだから。



「……レナ…」


切なそうに、苦しそうに紡がれた、あたしの名前。


どうしようもないほどジルへの想いばかりが募り、胸が軋む。


キスはしなかった。


ジルは吐き出すように、貪るようにあたしを犯した。


痛みも快楽も、傷つけ合いたいのか癒されたいのか分かんない。


似てるだけで全然別の存在のあたし達は、結局のところ、どこまでいったって混ざり合うことはないのだから。


ただ、心も体も痛くて、やっぱり悲鳴にも似たあたしの喘ぎだけが響いていた。



「死ぬなよ、レナ。」


いつもジルは、そう言って果てる。


花穂サンみたいに、とでも言われているかのようで、その瞬間に意識が飛んだ。


こんな行為自体、もしかしたら無意味なものなのかもしれないのに。