「レナ。」


携帯と指輪を両方の手の平の中に入れて視線を落としていると、上から聞こえた声に驚いた。


てか、テレパシーが本当に存在してるのかと思ってしまう。



「どした?
電話してたけど、何だった?」


多分、あたしの顔を見て気付いただけなのか、それかたまたま戻ってきただけなのだろうが、それにしてもタイミングが良いのか悪いのか。


諦めるようにため息を混じらせあたしは、問われたことには答えず首を横に振った。



「次、何飲もうかなぁ。」


「一番安いのだったら許してやるよ。」


「お金払うのはあたしでしょ?」


「だから言ってんのー。」


思わず笑い、ビールを注文した。


拓真は休憩なのかやっとちゃんと隣へと腰を降ろし、煙草を咥える。


あたしは指輪を手の平の中で転がしてみたり、デザインを確認してみたり、自分の指に嵌めてみたり。



「拓真って指太いね。」


あたしの指に嵌めてみたけど、全然サイズが違うし、親指ですらも少し緩い。


笑って言うと、「そう?」と首を傾けた彼はあたしの手を一緒になって覗き込む。



「俺は多分、普通だよ。
レナの指が細いの。」


「そうなの?」


「でも俺、指が細い子タイプですけど。」


あははっ、と笑ってしまった。


ただの色恋なのか本気の台詞なのかはわかんないけど、拓真と居ると笑うことが出来る。


彼はあたしの指をつんつんしていて、思えば拓真は他のお客には肩を組んだりが当たり前なのに、あたしには指一本触って来ないな、と思い返した。


嘘でも、ジルよりは大切にしてくれてる気分になる。