「ねぇ、拓真って人気だったんだね。」


彼が他のテーブルでお客とイチャついてる間、あたしはグラスを傾けながらヘルプの男に話し掛けた。


今更ながら、あたしは拓真のことなんて何も知らなかったんだな、と思ってしまう。



「うちのナンバースリーっすよ?
知らずに指名してたんすか?」


「ダメなの?」


「…いや、そういうわけじゃ…」


つまんない話しか出来ない男だな、と思った。


拓真に会いに来たんだから、こんな変なのと話してても当然だけど盛り上がることはなく、仕方なくあたしは、新人だという彼に一気をさせまくって楽しんだ。



「弱いよ、アンタ。」


「ちょっ、勘弁してくださいよ~!」


ホストクラブで新人と言えば、とにかく飲むのが仕事だ。


なのにコイツときたら、飲めない上に文句を言いやがり、ホスト失格だとしか思えない。



「レーナ。
ダメじゃん、新人を苛めたらさぁ。」


困ったように笑いながら、拓真はひとりお客を見送り戻ってきた。


不貞腐れるように頬を膨らませれば、また笑われる。


で、犬のように笑うなぁ、といつも通りのことを思いながら、あたしは飲む。



「つまんなーい。」


「ちょっとだけ待っててよ、な?」


「待たない。
てか、待ちたくないし。」


「…レナ?」


珍しく駄々をこねるあたしに、彼は肩をすくめた。


ただ、待つってことはもうしたくないと、酔っ払った思考の端で思ったのだ。