「…レナ?」


「拓真、真面目に頑張ってるー?」


ひとりでクロスに来たのは、初めてだった。


そんなあたしに拓真は目を丸くしながらも、席へと案内してくれる。



「…どした?」


「ん~、何となく。」


「俺に会いたくなったんだぁ?」


「正解ー!」


あははっ、と笑った。


拓真はきっと、望めばちゃんと傍に居てくれるだろうし、あたしに寂しい想いなんてさせないだろう。


だってこんなのもう、独りじゃ耐えられないじゃん。



「てか、誕生日の時ありがとね。
何かさ、ちゃんとお礼言えてなかったし。」


「そんなこと気にしてたんだ?
つか、俺もちゃんと祝ってあげてないし、お互い様じゃん?」


「まぁ、どっちでも良いんだけどさ。
飲みに来てあげたんだから、感謝しなよねぇ?」


「感謝してますよー。」


「心がこもってなーい。」


まぁ、良いやとばかりにあたしは、高い酒を注文し、みんなで乾杯した。


もちろん、ヘルプについてる野郎共が、そのほとんどを飲みやがるのだけれど。



「レナ、金大丈夫?
そろそろストップした方が良いって。」


「レナ様ナメてる?」


「いや、マジな話。」


どうやら拓真は、あたしにあまりお金を使わせたくはなさそうだ。


まぁ、お店に呼ばない時点でもはやお客とは思われてないんだろうけど。


てか、さっきからちゃんと見てると、拓真はたくさんの指名客のテーブルを行ったり来たり。


でも、何故か少しだけだとしても、あたしのところには戻ってくる。