全ての誘いを断り、あたしは真っ直ぐに自分の家に帰った。


もしかしたらジルが、って期待してたけど、当然だけど誰も居なければ、夕方家を出た時と、何も変わりはしていない風景。


それからも、ずーっと待ち続けてたけど、空が白み始める頃には、気付かぬうちに眠っていた。


期待したって無駄だって、そんなの大昔からわかってることじゃない。


だって、両親からですら、連絡はなかったのだから。


シュウは生きてるだけで喜ばれるのに、あたしは生きてても何とも思われないらしい。


そんなことが、また悲しかった。


誕生日のあの日、一度っきりしか掛けていない、あの人へと電話。


訳もわからない間に、あたしはハタチになってしまったらしい。


例えばクリスマスもお正月も、数日遅れでジルと一緒に突然やってきたように、あたしの誕生日も、数日遅れでジルと一緒にやってきてくれる気がした。


だからあたしは、翌日も、その翌日もアフターを断り、真っ直ぐ家に帰った。


毎日毎日夜明けを見た。


なのに待っても待っても、ジルは来なかった。


電話もないけど、あたしから掛けることはもうしない。


まだ今なら、笑って許してあげられる気がしていた。


仕事だったんだ、とか嘘ついてくれたら、信じてあげられる気がしていた。


だけどさすがに7日が過ぎる頃には、もう本当に無理だと思った。


独りで居るのと、独りになるのは全然違う。


ジルの服も、歯ブラシも、いつも通りにそこにはあるのに、当の本人が居た痕跡は、ぬくもりは、跡形もなくなっていたのだから。



「久しぶりじゃーん。」