あたしはあれから、シュウの話をしなくなった。


あの遺体のことを思い出したくなかったし、あれと同じようなことが再びあるのを想像するのもまた、怖かったから。


ジルもまた、あたしとホラー映画を観ることはなくなった。


多分思い出させたくないんだろう。


でも、恋人なんかでもない、相変わらずの似た者同士。



「ジルの誕生日っていつ?」


『夏。』


「嘘だぁ、似合わないよ。」


『じゃあ、冬。』


「秋は?」


『焼き芋?』


「…食べるの?」


『食べない。』


「で、誕生日は?」


『春だっけ。』


「じゃあ、あたしと近いかもしれないね。」


『そうかもな。』


結局、何だったのかわからない通話は、それで終了した。


声を聞いて、生きてることに安堵して、また別々の世界を生きる。


あたし達にとっては、たったそれだけのことなのだ。