それからふたり、冷蔵庫からビールを取り出した。


軽く乾杯して大した会話もしないまま、何でか一緒にお風呂に入ることになり、湯船に浸かりながらそれをあおった。


あたしはジルの膝の間に入るような格好で、視界の端には彼の腕のトライバルが、真っ白な湯船の中で嫌に存在を主張している気がした。



「ねぇ、何でそんな冷めた顔してんの?」


「冷めてませんけど。」


「冷めてるよ。」


「冷めてねぇよ。
つか、お前は酔っ払ってんのかよ。」


酔っ払ってないでーす、と言ってあたしは、体を反転させてジルに抱き付く格好になった。


困ったようにため息を混じらせた彼は自分の分のビールを口に運び、渋みに小さく眉を寄せる。


とにかく、寂しくて虚しくて、仕方がなかったのだ。


親はあたしのことなんて見向きもせずにシュウのことばかりだったし、アイツが居なくなった今でも、やっぱりそれは変わることがなかったから。


だからこれ以上必要とされない生活に耐えられなくて、家を出たのだ。


シュウを見つけたら、ぶん殴ってやらなきゃ気が済まない。


あたしの夢も何もかもを棒に振った張本人が、病気を治すわけでもなく、生を全うするわけでもなく姿を消すなんて、許せるはずもないんだから。



「キス、して。」


あたしの心の中には確実に埋められない場所が存在していて、痛みでも快楽でも良かったのかもしれない。


何故かジルは、そんなあたしの頭を何も言わずに撫でてくれ、次第に涙が込み上げて来てあたしは、抱き付いている腕に力を込めてしまう。


苦しいって、と彼は言いながらも、意味わかんねぇよ、と付け加えた。



「良いよ、わかんなくて。」


言うと、彼はフッと口元を緩めた刹那、あたしの頭を撫でていた手の平で引き寄せ、キスをしてくれた。


ただ、どうしようもなく埋められない部分をツギハギすように、何度も角度を変え、吐息を絡め合う。