「それより顔広い、って言ってたの、どれくらい広いの?」


「…何で?」


「あたし、探してるヤツ居るから。」


「へぇ、どんなヤツ?」


「霧島シュウ、ってヤツ。
18だけど、年も名前も誤魔化してるかもしれない。」


難しいな、と彼は言った。


まぁ、そうだろう、とあたしは思った。


第一この街に居るとも限らないし、居たらコイツより先に警察が見つけてくれてるだろうから。



「そいつと、どんな関係?」


「教えない。」


「じゃあ無理だって。
どこの誰かもわかんないで、名前と年じゃ探偵だって探せねぇよ。」


「写真ならあるよ。
探してくれるなら、今度渡す。」


警察が見つけられないとなると、シュウは多分、表の世界には居ないのだろうとは、何となくだけど思っていたこと。


だからこそ、あたしはキャバクラで働いているのだし、こんな裏事情に精通していそうな男に話したのだ。


問うたあたしにジルは、少し悩むように眉を寄せたが、すぐに良いよ、と言った。



「ついでだし、探してやる。
けど、期待すんなよ?」


「…マジ?」


「マジだって。
俺は基本、女の頼みは聞いてやるタイプだから。」


嘘臭いとは思ったけど、ありがとう、と営業スマイルを作って向けてみれば、ジルは相変わらず興味もなさそうな顔で、煙を吐き出した。


作りモノなんだと言うジルと、思いっきり作りモノのあたしは、きっと似ているのだろうろ思う。