ジルと一緒に過ごす夜は、決まってお酒を飲みながら映画のDVDを観る。


あたしが恋愛映画を借りようとすると、彼は必ずと言っていいほどホラー映画を借りるのだ。


気持ち悪いから嫌だ、と、いつもあたしは言っていた。


怖いとか怖くないとかじゃなく、あの映像ですら吐き気を覚えていたのに。


なのに先ほどの残像は、頭の中から消えてはくれない。


血の気が引き、震えさえも止まらず、喋ることは出来なかった。


ジルはそんなあたしに話し掛けていたのかもしれないし、悲しげな瞳を向けていたのかもしれないけれど、顔を見ることさえ出来なかった。


ただ、あたたかな手を繋いでいてくれたことだけは、体が覚えている。