それからは慌ただしい毎日だった。

でも頑張って泣きながら葬儀、四十九日を済ませた。
その夜、主治医さんが家のぼろアパートに訪ねてきた。



「桃ちゃん、実は勝春さんの枕の中から君宛の遺書が見つかったんだ。」


え。枕の中…


「み、見せてもらってもいいですか?」

桃は改めて主治医と向かい合ったちゃぶ台の前できちんと座り直してから履いているスウェットで両手を拭った。


「実は私宛にも短くメモ一枚があってね、四十九日が終わるまで渡さないよう伝えられていたんだ。遅くなってすまないね」


ちきしょう。
相変わらず主治医さんは優しかった。

嬉しくてこぼれた笑みから主治医さんの優しさと父さんの遺書の嬉しさから涙が溢れる。


遺書を握った両手がガクガクと震える。


「…大丈夫だよ、ゆっくり時間をかけて読みなさい。」


主治医さんは震えたあたしの両手をしわしわの両手で優しく包んでくれた。

またそれに涙がでる。


「あ、ありがどうっ、、ございまずッ…」

桃は鼻水を垂らしながら仲良く並んだ両親の遺影を見つめた。


あたしはそれからずっと泣き続けた。
主治医さんはあたしが落ち着くまで両手を離さないでくれていた。

気づいたら朝になっていた。

そこには主治医さんからの応援の言葉が書かれたメモと飲みきった茶飲みが丁寧に置かれていた。



ちきしょう、
また涙が溢れてくる。

だが桃は遺書をちゃぶ台に残し潤んだ目で壁に体をぶつけながら脱衣場で泣きながら顔を洗った。

遺書は家唯一のちゃっちい仏壇の前で堂々と読むことにした。