すると、その音に反応したかのように、海が表情を変えた。
波は荒々しく、風は強くなっていく。
不思議なことに、空は陰ることはなく、太陽は昇り続けていた。
俺はマストの近くまで走ると、柱の中央にあるスイッチを押した。
途端、拡声器からブザー音が鳴り響く。
「―――何事だ!?」
一番に甲板に飛び出して来たのは、寝起きで髪がボサボサのレキ。
次いで、どんどん船員たちが現れた。
甲板に出ると、辺りの異様な光景にみんな目を奪われた。
「何よこれ、嵐?…にしては、空は穏やかだし…」
不安を隠しきれない様子で、ニーナが船から身を乗り出した。
「…ねぇ、あっちに何か見えるわ!」
ニーナが指差した方向を、目を細めて見る。
確かに、何かが動いて…こっちに近付いてきている。
「おい、あれ…竜巻じゃね?」
レキがそう言うと、それはだんだんハッキリと見えるようになった。
どうやら、物凄い速さで近付いているようだった。


