何度もその身体を、抱きしめたいと思ったんだ。
けど、それすら出来なかった。
ララを想う気持ちが、心にブレーキをかけた。
「…は」
自然に、乾いた笑いが零れた。
結局俺は、ララに護られてばかりだ。
「…情けない」
自分の気持ちを伝えることすら、出来なくて。
俺たちを想い、離れることが、ララの選んだ道なのに。
それを悔しいと思うなんて…自分勝手もいいことだ。
「………」
俺はあと何度、月を見上げては君を想うんだろう。
月はすぐそばにあるのに、いくら手を伸ばしても掴めない。
俺は暫くの間、その場に佇んでいた。
…どのくらい時間が経ったのか。
辺りがうっすらと白みを帯び、太陽の光が眩しく世界を照らし始めた。
「………」
そろそろ部屋に戻ろうと、踵を返した俺は、すぐに立ち止まった。
…この音は、何だ?
遠くから聞こえる妙な音に、眉をひそめる。


