「…レキ、鬱陶しい。ニーナ、零れてる」


俺の指摘に、二人は慌てて我に返る。


「え!? 鬱陶しい!? 誰!? 俺!?」


「やだ、いつの間にスープがお皿から移動したのかしら?」


「………」


こんな二人の様子に、またため息が出る。


船員がみんなこの調子で、それが一週間以上も続いているから、さすがに気が滅入る。


―――ララがいなくなった穴は、こんなにも大きい。



あの日。


朝六時になっても、ララの姿は見えなかった。


それが、答えだと。

それが、ララの選んだ道だと。


そう判断した俺たちは、一時間後に出航した。


何故一時間後だったかと言うと、レキが散々ごねたからだ。



出航後、丸一日は、誰も何も話さなかった気がする。


これほどまでに士気が下がった仲間を見たのは、初めてだった。


…幾度となく、仲間を失ってきた。


けれど、気持ちの切り替えはみんな上手かったのに。


なのに…ララがいなくなった途端、生きる気力を失ったかのように静かになった。