・ゼンside・


水の都リティラを出航してから、一週間以上が経った。


それなのにまだ、一向に新しい土地が見えてくる気配がない。


…否、幸いなことに、と言った方が正しいかもしれない。


「う―――――…」


何とも言えない呻き声を上げたのは、レキ。


レキは椅子に逆向きに座り、背もたれの上に顎を乗せていた。


そして頻繁に「うー」やら「あー」という呻き声を上げている。



俺は目線を横にずらし、スープを飲んでいるニーナを見た。


いつもならニーナの鋭い言葉が飛んでくるはずなのに、ニーナは黙りを決め込んでいた。


スプーンからポタポタと零れ落ちるスープに、ニーナは気づいていないようだった。


「………」


俺は大きくため息をつく。


けれどそのため息は、誰の耳にも届かなかった。



今や、船員の誰もが気力を失っていた。


食堂を取り巻く空気は、明らかに淀んでいる。


…その原因は、聞くまでもない。



俺はスプーンを、わざと音を立てて皿の上に置いた。