サンの吐息を、間近に感じたそのとき。
―――――ララ
名前を呼ばれた、気がした。
「………ララ?」
サンの驚いた声で、私はサンとの距離が広がっていたことに気付く。
自分の腕が伸びているのを見て、無意識にサンとの距離を開かせたんだと知った。
「あ…私…」
サンの胸を押していた腕を、慌てて引っ込める。
傷ついたようなサンの表情を見て、視線を床に落とした。
「私っ………」
…言葉が、見つからない。
声が…ゼンの声が聞こえただなんて、言えない。
「…あーあ。せっかく埃取ってやろうとしたのに」
サンの明るい声音に、思わず顔を上げる。
「え…?」
「ここ。髪に埃ついてる」
再度伸びてきたサンの手のひらが、私の髪を掬った。
その手のひらを広げると、小さな埃の固まりがあった。
「な?」
…まるで、貼り付けたような笑顔だった。
隠すのが難しいくらい、私はサンを傷つけた。


