サンが扉を閉める小さな音が聞こえたとき、私は机の上のあるものが目に入った。
「…地図?」
机に近付いて、その上にある紙を捲ると、描かれていたのは地図だった。
振り返ると、サンが笑いながら答えた。
「そうだよ。俺たちの航海図。…まだ未完成だけど」
サンの言葉通り、地図は所々が空白になっていた。
その部分に触れると、サンの旅の思い出が、手のひらから伝わってくるような気がした。
けど実際は…サンの、サンだけの地図。
カタンと小さな音が響いて、地図に目を奪われていた私はビクッと肩を震わせた。
いつの間にか、すぐ隣に来ていたサンは、地図じゃなくて私を見ていた。
「……サ、ン?」
その瞳が、あまりにも私だけを映していて。
吸い込まれそうな気がして、怖くなった私は名前を呼んだけど、サンは答えない。
サンの右手がスッと伸びて、私の髪に触れた。
心臓が跳ねると共に、顔が熱くなる。
触れられた髪までも、熱を帯びたような気がした。


