どんなに泣いたって、目の前の現実は変わらないのに。
なのに…考えてしまう。
―――出逢わなければ、よかった。
出逢わなければ、こんなに苦しい想いをすることもなかった。
でも、出逢わなければ…私はきっと独りぼっちだった。
喜びも、悲しみも、いろんな感情を全て、私は出逢いから学んだ。
幸せだと、心からそう思える。
…でも。
その幸せが、半分になってしまう。
太陽が沈むのは早く、空を見上げると、月がひっそりと浮かんでいた。
…太陽か、月か。
出逢うことのない、このどちらかを選ばなきゃいけない。
考えれば考えるほど、どちらも大切で。
どちらも私には必要なのに。
「ゼン…サン…」
二人の名前を呼ぶと、視界が滲んで、月が歪んだ。
私はしばらく、その場で泣き続けた―――…


