「…え、何マジでララちゃんどうしたの」


「うるさい黙ってレキ」


止めどなく零れ落ちる涙のせいで、視界が揺らぐ。


俯いた私の瞳に、自分の涙が床を染めていく様子が映った。


「おーい二人共、飲み物淹れた…って、ララ?」


扉が開く音と共に聞こえた、ジークの声。


でも、私が今一番聞きたいのは…



「………え?」



急に手を引かれ、私は引っ張られるように走り出す。


開け放たれた扉を抜け、大地を踏みしめる。


背後から聞こえた名前を呼ぶ声は、閉じた扉によって遮られた。


「…ゼン?」


立ち止まったその後ろ姿に、私は小さく声を掛けた。


ゼンは振り返らず、私の手を引いたままゆっくりと歩き出す。


「………」


驚いた拍子に、涙は収まったけど。


どくんどくんと、心臓がうるさく動き出す。



…繋がれた手が、熱い。


私は何も訊けないまま、ゼンの後を黙ってついていった。