私が、ちゃんと選べるように。


自分の意志で…決めるために。


「うん…ありがとう、サン」


そう言って微笑むと、ふわりと優しい温もりが私を包んだ。


抱き締められてる、と気づくまで、私はその場で動けなかった。


「~っ、サン!?」


「…好きだ」


ぎゅうっと、サンの腕に力が籠る。


痛いのに、痛くない。

苦しいのに、苦しくない。


サンの想いが全身から伝わってきて、身体が熱くなる。



ゼンとは、また違った温かさ。


けど…不思議と安心する。


「ごめんな」


体が離れると、困ったように笑うサンの姿が目に入る。


「じゃあ…、また」


サンはすぐに背を向けると、小さな丘を下って行った。


―――"また"。

その言葉には、サンの期待が含まれているとわかった。



でもね、私は―――…



サンの姿が見えなくなるまで、私はその場にずっと佇んでいた。