「ゼンの噂は、聞いてたんだ。俺を捜してる、黒髪の少年がいるって」
サンの言葉に、俯いて考え込んでいた私は顔を上げた。
…そうだ。
ゼンは、私たちの知らないところで、サンを捜してた。
「…だからてっきり、俺は予定通り、憎まれてるんだと思ってた」
ゼンはサンに復讐したくて、サンを捜してたんじゃなかった。
きっと…真実を知りたかったのかもしれない。
あれ?
でもゼン…真実を知る前に、どこかへ行っちゃったよね?
その真実を、私が聞いちゃってるし…。
うーん、と悩む私に、サンは笑った。
「我が弟ながら、掴めないよ」
「…うん、本当」
つられて笑うと、逆にサンが急に真顔になるから、ドキッとした。
「え…どうしたの?」
「ララ、俺…もうバカな考えをすることはやめた」
サンの瞳に、緊張している私の顔が映る。
その瞳から、私は目を逸らせなかった。


