「…俺は生きる価値なんてない。そう思ったのに、生きなきゃいけないと…同時に思った」
「……それでゼンに?」
私の言葉に、サンは視線を私に移す。
「そう。ゼンに生きて、俺を殺してもらおうと思った。…それが、俺の運命だった」
―――"だった"。
そう過去形にすると、サンは困ったように笑った。
「なのに、台無しだよ。ゼンは俺を殺そうともしなかった」
「…当たり前だよ」
だって、兄弟だもん。
そう言おうとしたけど、サンは私が言いたいことがわかったかのように苦笑した。
「ゼンと同じ年頃の少年も、殺されそうだったのを庇ったのに。憎しみは集団になるほど増すから」
その少年は、レキを指すんだとわかった。
きっと、ゼンがレキに話すことで、復讐という文字を植え付けようとしたんだ。
でもゼンは…レキに事件の真相を話さなかった。
このときのゼンは、サンに何を想ったんだろう。
サンを捜して、何を伝えたかったの?


