「髪の色を変えただけじゃ、俺自身は何も変わらない。そう思った」
サンの指先が、私の髪を掬う。
その仕草がゼンと重なって、鼓動は収まるどころか速くなるばかりだった。
「…だったら、自分と向き合おうと決めた。ありのままの姿で…生きようと決めたんだ」
指の隙間から、はらりと髪が落ちてゆく。
サンはその様子を眺めながら、瞳を伏せた。
「けど結局は…俺は進むべき道を間違えた」
微かに声が震えていたような気がして、私は唇をきゅっと結んだ。
…きっと、サンがこれから話すのは、ゼンが一番訊きたかったこと。
ゼンの―――傷の、一部。
「ララと別れてしばらくして、俺は"ラー"のある海賊団に入った」
聞き逃してはいけない気がして、私は耳を澄ませた。
「俺は…やっと仲間を見つけたと思った。船長にはなれなかったし、"ルナ"でもない。それでも毎日楽しかった」
遠い過去を懐かしむように、サンは瞳を伏せたまま続ける。


