「俺が独りで旅立ったこと、ゼンから聞いてると思うけど。…なかなか、仲間が集まらなかったんだ」
当時を思い出したのか、サンが苦笑する。
「子供の船長についてく物好きなんて、いなかった。俺は暫く独りで旅し続けたけど…無理だと、悟った」
サンはそっと左腕に手を添えると、僅かに身震いした。
そこには、私のような傷跡が残っているのかもしれない。
遠くを見つめたまま、サンは再び口を開いた。
「何度も海賊に狙われては、命を失いそうになった。それが怖くて…俺は逃げた」
―――逃げた。
その単語を口にしたときのサンは、とても悔しそうだった。
「俺は父さんみたいな"ルナ"になるのが夢だった。けど現実は薄汚い"ラー"の下っ端で。海賊団を転々としてた」
情けないよな、とサンが笑う。
「命が危なくなったら、自分がいた場所を捨てて…より安全な場所を選ぶ。俺は逃げることしかできなかった」
「………」


