交わった刃は、ピクリとも動かず静止していた。


それを悟ったのかのように、風が止む。


「…ゼン。忘れてないはずだ」


静かな空間に、サンの声が響いた。


「俺は、お前の両親を、仲間を…売った」


不気味なほど静かに呟かれた残酷な言葉に、ゼンは眉ひとつ動かさない。


ただ、じっとサンを見つめていた。


何かを祈るかのように、ずっと。


「―――"生きて、強くなれ。そして俺を…殺しに来い"」


サンの瞳が、すうっと細められた。


「…そう、言ったはずだ」


静止していたふたつの刃が、再び動き出した。


幾度となく、ぶつかり合う度に奏でられる金属音に、目眩がする。


「……っ、サン…!」


苦痛に満ちたゼンの声がそれに重なって、耳を塞ぎたくなる。


ゆっくりと、けど確実に、ゼンは押されていた。


わたしから見てもわかる。


ゼンの刃には…迷いが、あった。