「その通りだ。俺は以前、ララに逢ったことがある」
再び海に視線を戻したサンは、何かを思い出すように瞳を伏せた。
「…海賊として一人で旅立った俺を待ってたのは、決して輝かしい日々じゃなかった」
サンが少しずつ紡ぐ言葉と、波の音が混じり合う。
「ララと出逢ったあの日、俺はある海賊団を抜けたところだった」
あんなに捜していたサンが目の前にいるのに、実感が湧かない。
そして話しているのがララのことだなんて…何故か可笑しく思えた。
「月に照らされる中で、小さな人魚が泣いていた。俺も泣きたい気分だったから、思わず話しかけた」
確か、その時のララは…両親を亡くした、直後だった。
「話を聞いたらさ、その子の方が俺より何倍も深い傷を負っていた」
「………」
「自分の情けなさに気づいて、俺はその子を必死に励まし続けた」
―――光を与えてくれた。
ララは、確かサンのことをそう言っていた。


