・ゼンside・
「―――――サン」
ずっと守り抜かれていた沈黙を破ったのは、俺だった。
サンは目線だけで俺を捉えると、またすぐに海へと視線を戻した。
…ララが倒れたあのあと、すぐにジークの家を借りてララを休ませた。
一旦ジークの家に来たサンは、ララをベッドに横にさせるのを黙って見届けたあと、すぐにその場を離れようとした。
その腕を掴んで引き留めたのは、誰でもない…俺だった。
何をしたかったのかは、自分でもよくわからなかった。
ただ、この瞬間を逃したら、サンはまた俺の前からいなくなる気がして。
…どうしても、真実が知りたかった。
何故、昔サンは俺たちを裏切ったのか。
何故、この街の英雄になっているのか。
それに…ララがずっと逢いたがっていた人物が、サンなのかということを。


