そっと瞼持ち上げると、視界に飛び込んできた二つの影。
「―――――、」
高鳴る心臓を抑えつけながら、私はその影に近づいていく。
ゼンと…サンは、二人並んで丘の上に立っていた。
私に背を向ける形で、丘から見える海の方を向いている。
会話は、何もないみたいで。
二人の間にある大きな距離が、そのまま二人の心を表しているみたいだった。
「………」
そんな二人の背中に、私はかける言葉が見つからなかった。
途中で足を止め、唇を噛みしめる。
何か一言、声を発せばいいだけなのに。
それが…できない。
二人を包む空気には、私は入れない気がした。
それでも勇気を振り絞って、声をかけようとした、そのとき。
「―――――サン」
ゼンの声が、静かに響いた。
―――このとき、この場にいなかったら。
このあとの決断は、変わっていたのかな…?


