「約束って、そう簡単に口に出来るモノでもないしね」
…それはきっと、ゼンなりの優しさ。
その優しさが、すごく嬉しかった。
「…それにあんた、訊いたって教えてくれないだろ」
「そ!そんなこと…ないよ?」
「何で疑問系なの」
は、と笑うゼンの姿に、私も微笑む。
―――ゼンのご両親は?
…なんて、訊けないよね。
いつか…ゼンの話も聞きたいな。
そのときは、私も…"約束"の話をしよう。
今はまだ、自分のことで精一杯だから。
「ゼン、"夢紡ぎの唄"って知ってる?」
ふと思いついてそう訊ねると、ゼンは「いや、」と首を振った。
「私たち人魚の間に伝わる唄なんだけどね、まだ知らない未来に向けて、夢を紡いでいけるように願う唄なの」
歌詞はない。
ただ、メロディーを口ずさむだけ。
でも…あたたかい唄。