私―――…



「私も、家族いないの」



そう口にしてすぐ、吐き気がした。


思い出したくない過去。

口にしたくない事実…。



それでも、今ここで隠していることが、ゼンに失礼な気がした。


「………」


驚いた様子のゼンに、私は弱々しく笑いかけた。


「…殺されちゃったんだ。"ラー"に」


私が、十二歳のとき。


家族の温もりは、いとも簡単に奪われた。


「…復讐の為に、船に乗せろって言ってた?」


そう言ったゼンの瞳を捉え、私は首を横に振る。


「違う。復讐したくないって言ったら嘘だけど、そうじゃないの」


「…そう」


「…訊かないの?理由」


訊かれなかったことを不思議に思った私は、ついそう訊ねてしまった。


「…約束、って言ってたし」


ゼンが、頭を掻きながら呟いた。