「…よかった…ゼン…」


「よくない、何でっ…」


「…ごめんね、わたし…どうしても…ゼンのそばに、いたくて」


乱れた呼吸を繰り返しながら、クレアは微笑んだ。


「…ゼンを、護りたいんだよ…」


目頭が、熱くなる。


その笑顔は、俺なんかには勿体無い。


「…馬鹿だ、クレア」


「…ふふっ…そうね。でも、いいの…ゼンのために…命を失うのは、怖くない」


ダメだ。

クレアの命は、俺はの命よりも大切なのに。


「…泣かないで…ゼン」


クレアの華奢な腕が、俺の頬に触れた。


クレアの言葉で、俺は自分の頬が濡れていることに気づいた。


「どうせ…あと少しの命だったもの…。ゼンを護れたの。…嬉しいわ」


「………クレア」


徐々に消えていく命の灯火を、感じ取ってしまう。


なのにクレアは苦しみを見せず、俺に笑顔を向けるんだ。


「…ゼン…」


か細い声で、クレアは俺を呼んだ。