人の命は、儚い。


だから強くなりたいと思う。

何かを護りたいと思う。


…けど、それが正解なのか?


誰かを犠牲にしてまで、俺は強くなる必要があるのか…?



「―――ゼン!!」



戦いの最中に、こんなことを考えていた自分は馬鹿だった。


気づけば、背後にいた敵が、剣を振り下ろす直前で。


反応が遅れた俺は、もうどうすることも出来なかった。


「………」


俺の命も、ここまでか。

サンに文句を言う前に、俺は…



無意識に閉じかけていた瞼に、赤い鮮血が飛び散った。


不思議と、痛みはなかった。



―――斬られたのは、俺じゃなかったから。



「―――――っ!」


目の前の光景が、もう信じられない。


何で…


「―――クレア…!!」


ここにいるはずのない姿、そこにあった。


クレアの崩れ落ちた体を抱き起こすと、クレアは虚ろな瞳を俺に向けた。