私の瞳に映ったのは、一人の少年。



風に優しくなびく黒髪。


どこか強さを宿した茶色の瞳。


一見、どこにでもいそうな普通の男の子。



…でも私は、彼から"何か"を感じていた。


「…聞いてる?」


僅かに眉根を寄せる彼の言葉に、私はハッとした。


目の前の少年を、じっと見つめる。


「…私を、捕まえに?」


「………は?」


間の抜けた返事を返され、彼が追っ手ではないことがわかって安心した。


私はよろけながら立ち上がると、弱々しく微笑む。


「私、追われてるから。…関わらないほうがいいと思う」


「………」


仏頂面で私を見る彼に、背を向けて走ろうとした。


その時。


「―――見つけたぞ!あっちだ!!」