「…海賊は、中途半端な覚悟じゃ…なれない」


答えを探すように、少しずつ話し始めた俺の言葉を、ニーナはただ黙って聞いていた。


「…命が懸かるんだ。自分の命も…仲間の、命も」


海賊は、死と隣り合わせの生き物だ。


その現実を、俺とレキは嫌と言うほど体験してきた。


大切な誰かを失うことほど、絶望に近いものはない。



握っていた拳は、知らないうちに僅かに震えていた。


それに気づいた俺は、まだまだ情けないと思い、苦笑した。


その直後、俺の拳が温かい何かに包まれた。


「………」


それがクレアの両手だとわかった時、クレアは既に俺の目の前にいた。


「…わかってるわ。でも、海賊じゃなくても、命は突然奪われるの」


その綺麗な瞳は、ただ真っ直ぐに俺を見ていた。


「わたしたちは、"今"を精一杯生きたいの。その為に、あなたたちの力を貸してほしいの」


逸らすことが、出来ない。


その澄み切った瞳から。